Around the Void
神戸市 — 築74年 古民家リノベーション
緑の壁と低い天井に閉じられていた続き間を、骨格だけ残して開く。梁は一本、そのまま残しました。
神戸市に建つ、築74年の木造住宅の改修である。天井の低い続き間が連なる、この地域によくある間取りの家だった。
開放感を得るため天井を解体したところ、小屋裏から予想を超える丸太梁が現れた。構造上残すべき部材であることに加え、その野性が空間の核になると判断し、小屋組は白く塗り込め、梁のみウォルナットで塗り分けて現しとした。土壁も同様に扱っている。土を落として現れた竹小舞は撤去せず、白く塗装するだけにとどめた。かつて土を支えていた格子はいま光を漉し、時刻とともに動く影を室内に落とす。
テレビは壁掛けとし、背後に収納の通路を設けた。配線や機器の類はすべて壁裏に納め、居間側には画面だけが現れる。
設計と施工と生活を並行させ、時間をかけて検証を重ねた住宅である。
間仕切りの多くは撤去し、扉は最小限にとどめた。閉じる建具は空間を圧迫する。カーテンで緩やかに仕切ることで、視線と光は奥まで通したまま、必要なときだけ場を閉じられる。
キッチンは、部屋に対して角度を付けて設置した。洗面と浴室への動線を緩やかに導き、同時に、部屋の角に用途を持たない余白が生まれる。その角にはいま、椅子を置き、棚を置き——飾るための空白として、頻繁に姿を変えている。
アイランドキッチンとベンチはモルタルで造作し、床はほぼ全面にタイルを敷いた。手や足が直接触れる部位には、できる限り本物の素材を用いている。
玄関の上がり框は、緩やかな弧を描く。玄関脇にシューズクローゼットを設けており、弧に沿って歩けば自然とそこへ足が向かう。動線を床の形で導くための操作である。立ち上がりはモルタルで納めた。
シューズクローゼットは増築した。もともと腰窓だった開口をクローゼットへの入口に変更した。凹の字に似ていた平面はこの増築で回の字のようになり、囲われた中庭が生まれた。
浴室は既製のユニットバスを用いず、在来工法で組んだ。モルタルの壁と床に置き型の浴槽、そしてガラスの仕切り。手前に吊ったカーテンは、キッチン側からの視線を必要なときだけ切るための装置であり、ガラス張りの浴室と日々の暮らしの折り合いをつけている。
- Location
- 兵庫県神戸市
- Type
- 古民家リノベーション
- Age
- 築74年
- Size
- 178㎡
- Term
- 約4か月
- Design / Build
- YON