Arch to Arch
神戸市 — 築48年 マンションリノベーション
個室をひとつも作らなかった48㎡。壁の代わりに、床の切り替えと曲線の天井が領域を分けます。
個室を一つも作らなかった。48㎡を壁で刻めば、部屋数は増えても暮らしは狭くなる。この住まいで領域を分けるのは、壁ではない。オークの床とモルタル調の床、その仕上げの切り替えラインと、頭上で曲線を描く下がり天井である。線は直線ではなく弧を描く。歩くたびに領域がゆるやかに移り変わり、48㎡という数字よりも広い奥行きが生まれる。
キッチン前の躯体壁は、テレビを掛ける壁と地続きになる。だから解体前から、ここはコンクリートを現す前提で設計していた。築48年の躯体が持つ荒々しい表情は、作ろうとして作れるものではない。
窓際は床の仕上げをさらに切り替え、ソラリウムとした。植物を並べてもいいし、服を掛けても、椅子を一脚置いてもいい。用途を決めすぎない床が一枚あるだけで、暮らしは季節ごとに姿を変えられる。
想定したのは、一人暮らしである。必要なものを挙げていく。洗面、トイレ、キッチン、LD、WIC、ベッドスペース。その中で平面の中心を決めたのは、「洗濯のスペースを削ってでも、WICを広く」という優先順位だった。48㎡の住戸としては異例の広さのWICが、住まいのほぼ中央に据わっている。
玄関を入ると、動線はすぐに3方向へ分かれる。洗面へ、WICへ、キッチンへ。帰宅して手を洗い、着替え、台所に立つ。一人暮らしの毎日に繰り返される順序を、そのまま平面に写し取った。
開口はすべて同寸のアーチで統一し、扉は付けていない。仕切ることの閉塞感から、暮らしを解放するためである。扉のない家は、どこにいても行き止まりがない。
解体は、ほぼスケルトンの状態まで行った。間仕切りも設備も配管も取り払い、築48年の躯体が現れるところまで戻してから組み直している。
設備はすべて新規。キッチン、ユニットバス、トイレ、洗面、給湯器。毎日触れるもの、暮らしの信頼に関わるものを確実に押さえていく。
濃色のキッチンは、荒々しいコンクリートの壁を背にして立つ。新しい設備と半世紀前の躯体が、同じ空間で互いを引き立てている。
玄関の床はテラゾータイル。石の粒が散る黒い床が、塗り壁とアーチの連なりを足元から引き締める。
扉一枚を隔てた外の共用廊下は、築48年のマンションのままである。だが一歩入れば、曲線と塗り壁の連なるまったく別の空気に切り替わる。その落差ごと設計した玄関である。
浴室はもともと、ベニヤ1枚で囲われた3×6のスペースしかなかった。半世紀前の一人暮らしの想定である。位置ごと動かし、1316サイズのユニットバスが納まる場所を躯体の中に作り直した。給排水を引き直せるのは、ここまで解体したからこそである。
洗面は黒のテラゾータイルに、黒の楕円ボウル。玄関の床と同じ素材を選び、住戸の入口と奥で表情を揃えた。
塗り壁の色は、白、セージ、土色。3色を面で塗り分け、そこで止める。色は増やすほど自由に見えて、空間の締まりを失うからだ。
- Location
- 兵庫県神戸市
- Type
- マンションリノベーション
- Age
- 築48年
- Size
- 48㎡
- Scope
- 全面(スケルトンリノベーション)
- Design Term
- 約4か月
- Term
- 約2か月
- Design / Build
- YON